ワンちゃんやネコちゃん、ペットと暮らす家づくりは、「犬や猫が好きだから」というだけでは上手くいきません。ペットの動きや習性、安全性、におい・掃除のしやすさ、温熱環境など、人と動物の両方が心地よく過ごすためには、住まい全体を総合的に考えることが求められます。
建築家・設計事務所が手がけるペット共生住宅は、かわいらしい設備を追加するだけでなく、犬や猫の行動特性を読み取りながら、動線計画や素材の選定、温熱環境まで丁寧に整えていきます。キャットウォークやスロープ、中庭のあるプランなど、ペットが自然に体を動かせる空間にすることで、人にとっても快適な住まいが生まれます。また、におい対策や抜け毛への配慮、温度ムラの少ない室内環境づくりなど、暮らしの質を左右する部分を設計段階で解決していきます。
この特集では、建築家・設計事務所が実際に手がけたペット共生住宅の事例に加え、犬・猫と楽しく心地よく暮らすための設計のポイント、費用の考え方、注意点などをご案内します。
ペット共生住宅とは、犬や猫などのペットが「家族の一員」「暮らしのパートナー」として生活に溶け込み、ストレスなく安全に過ごせるよう設計された住まいのことです。
一般的によく見られる「ペット対応住宅」は、滑りにくい床材や傷がつきにくい壁材、汚れにくい仕上げなど設備の工夫が中心ですが、ペット共生住宅はもう一歩踏み込んで、動線・居場所・温熱環境・外とのつながりなど、建築全体を通してペットと人の暮らしやすさを同時に高めています。
ペット対応住宅は表層的な設備の工夫や素材選びが中心ですが、ペット共生住宅では「犬や猫がどこで休むか」「どう動くか」「どこがストレスになりやすいか」を読み解きながら、間取り・開口部・高さ方向の動きまで含めて空間そのものを最適化します。
特に猫は上下移動が多く、犬は段差や温度変化の影響を受けやすいため、これらを設計段階から考えておくと、ペットも人間も心地よく暮らせる住宅となり、生活の質が大きく変わります。
ペットと暮らす住まいは、家族構成やペットの種類、頭数、性格による「個別性」が大きい分野です。建築家・設計事務所は、住まい手の暮らし方を丁寧にヒアリングしたうえで、動線計画・温熱環境・視線・光と風の入り方・素材選定などを総合的に考えていきます。
例えば、猫のためにキャットウォークを設けるだけでなく、どこで日向ぼっこするか、犬がストレスなく移動できるスロープの角度はどうするか、屋内外の行き来はどうするするかなど、住まう人、動物に合わせて細部まで設計できます。
犬は「匂い」と「温熱環境」に敏感で、家族の気配を感じられる場所を好む傾向があります。一方で猫は「上下移動」「見晴らしの良さ」「安全な隠れ場所」を求める生き物。ペット共生住宅では、それぞれの特性を理解しながら、以下のような空間をバランスよく組み合わせます。
・段差の少ない移動しやすい動線(犬)
・上下移動できる高さ方向の居場所(猫)
・日向・風通しの良い休憩スポット
・家族の気配が適度に感じられる位置にある居場所
・逃走防止・誤飲防止・温度管理など安全性の担保
・においへの対策・換気・掃除のしやすさ
等々、住まい全体を調整することで、人とペットが心地よく暮らせる空間が生まれます。
建築家・設計事務所が手掛けるペット共生住宅は、敷地条件・家族構成・ペットの性格を踏まえて、その家に住まう人、動物が心地よく暮らせる住宅を細部まで考えて実現していきます。同じ「ペットにやさしい家」でも、猫中心の家と犬中心の家では大きく異なります。
建築家・設計事務所が手掛けたペット共生住宅の一例をご紹介しますので、ワンちゃん、ネコちゃんと心地よく暮らせる住まいの実現のヒントとして、ぜひご覧ください。
猫と人がお互いに快適に住む、色々なしつらえがされた猫と暮らす家。 キャットステップ、キャットウォークなど、ジャングルジムの様な猫の遊び場が楽しそうです!
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気候風土を考慮したパッシブデザインでサステナブルな平屋。 吹抜けのリビングでは、猫階段とキャットウォークで高窓まで行き来できます。
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スロープで家中を自由に走り回れる愛犬家住宅。 縄張り意識の強い愛犬たちの無駄吠えを防ぎ、心配なく外部空間で遊べる中庭も。
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かわいい猫と暮らすために計画したバリアフリー高気密高断熱住宅。 猫ちゃんのために、高窓の一等席や猫階段、猫タワーを。 猫トイレは換気扇付きで人目から隠れるように用意。
詳細はこちらペットと一緒に暮らす家づくりでは、人の使い勝手だけでなく、犬や猫の行動特性を踏まえた空間設計が大切です。少しの工夫でストレスが減り、安心して過ごせる場所が増えるため、建築家・設計事務所では間取りや素材選びから総合的に考えていきます。
猫は上下移動ができる環境を好むため、キャットウォークやキャットタワー、梁上を使ったステップなど、立体的に動ける仕組みがあると快適さが大きく変わります。ハイサイド窓に向かって動線をつくると、外の景色を眺められる場所もでき、猫らしい伸びやかな空間をつくることができます。
犬は猫ほどジャンプ力がないため、段差や階段の扱い方が重要です。特にシニア犬は体力・運動能力も低下するため、緩やかなステップやスロープを設けることで負担を減らすことができます。フローリングは滑りにくい素材やコーティングを選ぶと関節への負担が軽くなり、ケガの予防にもつながります。
中庭やバルコニー、小さなドッグランなどがあると、外の空気を感じながら安心して過ごせる場所になります。脱走・落下を防ぐためには、フェンスの高さや隙間、手すりのデザインが重要です。プライバシーを保ちつつ、風通しや日射もコントロールできると理想的です。
犬も猫も、自分のペースで自由に動ける回遊動線があるとストレスが減ります。玄関の近くに洗面台や足洗い場、収納をまとめた「お散歩帰りの動線」をつくるのも便利。汚れを室内に持ち込まないような仕組みをつくることで、ペットにも人にも快適な住まいとなります。
犬猫は温度や湿度に敏感です。床暖房は冬の快適性を高めつつ、表面温度の上げすぎには注意が必要です。猫は呼吸器系、犬は体温調整に弱い面があるため、直射日光が強すぎる場所と涼しい場所の「逃げ場」をつくるなど、温度ムラの調整が重要です。におい・空気質の面で換気計画も欠かせません。
トイレは、換気・掃除のしやすさ・猫砂のストック収納を一体にして考えられていると、使い勝手が抜群に良くなります。壁・床は清掃性の高い素材を選ぶとメンテナンスが楽になり、におい残りも軽減できます。水回りの近くに配置すると、日々の清掃負担も大きく減らせます。
ペットと暮らす家では、犬・猫が自由に心地よく動けることはもちろん、人にとっても使いやすく、落ち着いて過ごせる住宅であることが大切です。双方の行動特性を理解し、生活動線・音・におい・素材などを丁寧に整えることで、心地よく共生できる住まいが実現します。
犬や猫が家の中を自由に行き来できるようにしつつ、人の動線を邪魔しないレイアウトが重要です。
例えば、キャットウォークはキッチンの作業スペースを横断しないように配置したり、犬が通るルートと人の主要動線を重ねすぎないなど、双方がストレスなく過ごせる計画が求められます。
建築家・設計事務所は家族構成やライフスタイルに合わせ、人とペットどちらも快適暮らせる動線を考えます。
来客への反応が強いワンちゃんや人見知りしやすい猫ちゃんは、玄関とリビングの間にワンクッションあると安心感が大きく変わります。
扉を追加したり、小さな「待機スペース」を設けることで、玄関での飛び出し防止や急な接触を避けることができるため、来客側にとってもペット側にとっても落ち着いた環境が整います。
ペットは「落ち着ける場所」「遊べる場所」両方が大切です。
猫がこもれる「隠れる場所」や犬が落ち着く「安心できる定位置」をつくることで、精神的に安定しやすくなります。
走ったり遊んだりできるスペースも確保し、体力や好奇心を適度に発散できるようにすると、問題行動の予防にもつながります。
ペットとの暮らしでは、音(足音・声)やにおいが生活ストレスにつながることがあります。
特ににおいのこもりやすい場所には十分な換気を行い、リビングや廊下などは空気が滞留しないようにレイアウトを工夫します。
音については、吸音材や足音が響きにくい床材の採用といった対策も効果的です。
床材は犬の足腰に優しく、猫が走りやすい滑りにくい素材を選ぶと安心です。傷や汚れがつきにくいフロアタイルや強化フローリング、消臭性のある素材なども人気があります。
壁は腰高まで耐傷性の高い仕上げにしたり、建具は引っかきに強い素材を選ぶことで、見た目の美しさを長く保つことができます。
ペット共生住宅では、一般的な住宅とは異なる素材選びが必要になるため、床材・壁材・建具のグレードによって費用が大きく変わります。例えば、滑りにくく傷が付きにくいフローリングやタイルは、通常の建材よりコストが上がりやすいものの、犬の足腰への負担を減らし、長期的に美観を保ちやすいなどのメリットがあります。
壁についても、引っかき傷に強い塗装やパネル材を採用することでメンテナンス性が向上します。また建具は、ペットの開け閉めや衝突に配慮した強度が求められ、ペットドアなどの追加仕様による費用差が出やすい部分です。
キャットウォークやキャットタワー、造作の階段ステップなど、猫の立体的な動きを前提にした設計は、オーダーメイドでつくることが多いため、既製品よりも費用がかかります。特に、梁やハイサイド窓と連動させた立体動線をつくる場合は、構造計画や仕上げなども含めて調整が必要となり、費用に反映されます。
犬の場合も、造作ベンチ下を寝床にしたり、収納とシェルターを兼ねたスペースをつくったりと、家具を住まいに組み込むほどコストは上がりますが、日々の使い勝手は大きく向上します。
玄関や勝手口、水回り近くに洗い場やスロップシンクを設けると、ペットのシャンプーや足洗い、汚れ物の処理をしやすくなります。これらは給排水工事が発生するため、追加の設備費用が必要です。
屋外に小さな足洗いスペースをつくる場合も、防水・排水・照明などの整備が必要となり、外構費用に含まれる形でコストに影響します。散歩帰りの動線とセットで計画することで、日常の負担を大きく減らすことができます。
ペットが屋外で安全に過ごせるよう、中庭・テラス・ドッグランなどを計画する場合は、外構工事の規模によって費用が大きく変わります。フェンスの高さや隙間、安全対策、床仕上げ、植栽の内容など、ペットの種類や性格によるカスタマイズも必要になるため、一般的な外構よりも考慮すべき要素が増えがちです。
特に犬の場合は足に優しい芝やタイル、猫の場合は脱走防止を含めた囲い込みなど、細かな仕様が費用に反映されやすいポイントとなります。
ペット共生住宅では、犬や猫それぞれの年齢や体格、性格の違いを丁寧に読み取ることが重要です。好奇心旺盛でよく動く子と、落ち着いて静かな場所を好む子では、快適だと感じる空間のつくり方がまったく変わります。
建築家・設計事務所は、飼い主の暮らし方とペットの行動パターンを重ね合わせながら、無理なく過ごせる高さや距離感、安心できる居場所づくりを行います。
多頭飼育では、食事・睡眠・遊びの場所が自然と競合しやすくなります。とくに猫は「自分の領域」を大切にするため、上下方向のテリトリーを確保したり、互いの存在を感じながらも程よい距離を保てるレイアウトが求められます。
犬の場合も、落ち着けるクレートの位置や動線が重ならないよう設計しておくと、日々のストレスが軽減されます。
快適性と同じくらい大切なのが、安全面をどう確保するかです。玄関やバルコニーには脱走防止の工夫を、キャットウォークや階段段差には落下を防ぐ設計を組み込みます。
また、誤飲のリスクがある小物が集まりやすい場所は収納方法を見直し、掃除しやすい動線や素材を選ぶことで、日常のケアも負担なく続けられます。
猫は上下を行き来する「立体的な動き」を好み、犬は段差の少ない「水平的な動き」を得意とします。両者が同じ家で暮らす場合は、この動きの違いを理解して、互いがストレスなく生活できるゾーニングを行うのが理想的です。
キャットウォークを視線の抜ける高い位置に設けつつ、犬が安心して歩ける床材やバリアフリーの動線を組み合わせることで、心地よい共存が可能になります。
ペットも歳を重ねると、足腰の負担が大きくなったり、視力・聴力が低下したりと、暮らしに必要な配慮が変わってきます。若い頃は問題なかった段差が急に負担になったり、ジャンプが難しくなることも珍しくありません。
建築家・設計事務所は将来の変化を見据え、段差の軽減、スロープの追加、見守りやすい動線など、介護期にも無理なく暮らせる余白を設計の中に残しておきます。こうした長期的な視点が、ペットにも人にも優しい住まいづくりにつながります。
ペットと暮らす住宅では、鳴き声やにおいがご近所トラブルにつながることがあります。特に犬の鳴き声は反響しやすく、住宅密集地では配慮が欠かせません。
建築段階で防音性能を高めた壁やサッシを選ぶこと、においがこもらない換気計画を行うことは、周囲への気遣いとして非常に有効です。住まい手が安心して過ごすためにも、外部への音漏れやにおい対策は初期設計の段階で検討しておくことが大切です。
床暖房は冬に快適な環境をつくりますが、犬・猫にとっては「暑くなりすぎる」リスクもあります。長時間同じ姿勢でいることが多く、低温やけどの可能性もゼロではありません。
床暖房エリアと非暖房エリアを程よく分けることで、ペット自身が「涼しい場所」に移動できる逃げ場を確保できます。また、温度調整が細かくできるタイプを選ぶことで、人にもペットにも快適な環境を保てます。
現代住宅は高気密・高断熱化が進んでいるため、意図した換気計画がより重要になります。ペットがいる住まいでは、毛やにおいがこもりやすいため、計画換気が適切に働くような換気経路の設計が必要です。
とくにトイレスペースや洗い場を含むエリアでは、局所換気との併用が効果的です。高気密であるほど換気の設計が住み心地に直結するため、設計段階で丁寧考えておくと安心です。
猫は日向ぼっこを好みますが、直射日光が長時間当たる場所に居場所を設ける場合は注意が必要です。特に夏場は熱がこもりやすく、体温調整の苦手な猫にとって負担となることがあります。
強い日射が入る窓には、ルーバーや庇(ひさし)で熱をコントロールしたり、猫が日陰に逃げられる高さ違いの居場所を用意します。陽の光を楽しめる心地よいスペースにするためにも、温熱環境の調整は欠かせません。
ペットとの暮らしでは、住む地域の環境も大きな要素になります。動物病院やトリミングサロン、ドッグランなどへの距離は、毎日の生活の質に直結します。特に持病があるペットやシニア期に入ったペットがいる場合、アクセスのしやすさは重要な判断材料です。
住宅建築の前に、周囲にどのような施設があるのかを確認することで、より安心して暮らせる住環境を整えることができます。
ペット共生住宅は、単なる飼育のしやすさではなく、人と動物が互いにストレスなく安心して暮らすための「環境づくり」が中心にあります。滑りにくい床材やニオイ対策といった基本的なポイントに加え、動線計画や音への配慮、外とのつながり方など、住宅としての質を高める工夫が結果的にペットにも心地よい空間をつくります。
家族の生活スタイルやペットの性格によって最適解が変わるため、設計段階から建築家・設計事務所と丁寧にすり合わせ、ペットも家族も無理なく自然に過ごせる住環境を目指し、将来の変化にも柔軟に対応できることで、長く心地よい住まいになります。
エリアやご家族のご希望・ライフスタイル、ペットの種類、性格に合わせ、ペット共生住宅を得意とする建築家・設計事務所のご案内も可能ですので、よろしければお気軽にお問い合わせください。